日本臨床免疫学会会誌
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WS3-2 アトピー性皮膚炎表皮におけるタイトジャンクションバリアと樹状細胞の解析
久保 亮治
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2015 年 38 巻 4 号 p. 289b

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抄録

  皮膚には角層のバリアと,その内側で液性環境の恒常性を保つタイトジャンクション(TJ)バリアの2つの物理的バリアが存在する.表皮内樹状細胞であるランゲルハンス細胞(LC)は,TJバリア外に樹状突起を延長して外来抗原を取得し,先制免疫の獲得に働くことを我々はマウスを用いて明らかにしてきた.本研究では,健康人皮膚と,角層バリア破綻が発症因子となるアトピー性皮膚炎(AD)患者皮膚の3次元観察を行った.ヒト皮膚でも活性化したLCはTJを突き抜けて樹状突起を角層直下へと延ばしていた.AD患者病変部では,活性化してTJ外に樹状突起を延ばしたLCが増加しており,経皮感作が亢進している可能性が示唆された.AD患者表皮には,inflammatory dendritic epidermal cell(IDEC)と呼ばれる,LCとは異なる特徴を持った樹状細胞が出現する.今回の観察により,IDECはLCと比較して表皮の深いところに位置し,周囲のLCが活性化してTJバリア外に樹状突起を延ばしている状況でも,常にTJバリア内に留まることを明らかにした.AD患者ではLCとIDECのいずれもがIgEレセプターを発現するが,TJ外に出た樹状突起先端に濃縮するlangerinとは異なり,IgEレセプターはTJバリアの内側の細胞膜に分布していた.すなわち,皮膚バリアを良い状態に保つことにより,新たな経皮感作やIgEを介したアレルギー反応を予防できることが予想され,AD患者の治療におけるスキンケアの重要性を示した.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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