日本臨床免疫学会会誌
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ワークショップ
WS3-3 臨床免疫学的アプローチからみた炎症性腸疾患の疾患感受性遺伝子
小林 拓中野 雅豊永 貴彦日比 紀文
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2015 年 38 巻 4 号 p. 290a

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抄録

  炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease, IBD)とは,原因不明の慢性炎症が主として下部消化管を侵す疾患であり,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis, UC)とクローン病(Crohn's disease, CD)の2疾患を指す.最近では,全ゲノム関連研究(GWAS)の手法の導入によって多くの疾患感受性遺伝子が報告され,現在ではその数は少なくとも163に上る.これらの疾患感受性遺伝子は,主として1)サイトカインに関するもの(IL12B IFNG, IFNGR2, IL10),2)リンパ球の活性化に関するもの(STAT1, PTPN22, JAK2),3)IL-17産生制御にかかわるもの(STAT3, IL23R),4)細菌に対する防御反応(NOD2, CARD9),5)オートファジーに関するもの(ATG16L1, IRGM),に大別され,炎症性腸疾患の病態を概ね物語っているととらえることができる.しかしながらCD,UCの一方のみで関与があるものは限定的で,大半の遺伝子がCDとUCに同方向性の影響を持っている(Jostins L et al. Nature 2012).本邦のCD患者にはNOD2の変異は存在せず,対してTNFSF15が疾患感受性遺伝子であることがわかっているなど,人種間で疾患感受性遺伝子に関する知見が異なることも興味深い.本ワークショップでは,我々が行ってきたIBD疾患感受性遺伝子NFIL3(Nuclear factor, interleukin-3 regulated)の臨床免疫学的解析の結果を例に示し,疾患感受性遺伝子の研究が病態解析に与えるインパクトについても述べたい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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