抄録
ループス腎炎はSLEの様々な症状の中でも患者の予後を決める重要な病態であるが,診断には患者の負担が大きい腎生検が必要なため,尿検査のようにより簡便な診断法が望まれている.最近,我々の研究室において,IL-6以外の炎症性サイトカインでも発現が誘導される新規の急性期蛋白質,LRGを同定した.LRGは関節リウマチの滑膜細胞など炎症部位で発現することが確認されている.今回,我々は,尿中LRGがループス腎炎を診断するのに有用なのかを検討した.本研究ではLRGとループス腎炎の関係性を調べるため,ヒトループス腎炎患者の病理診断・臨床検査の情報を元にループス腎炎の病型とLRGの関係を調べ,ループス腎炎時の血液・尿中のLRGの変化と,腎臓でどのような機序でどの細胞がLRGを発現するかを調べるためにSLEモデルマウスであるNZ B/W F1マウスを用いて解析を行った.ヒトSLEの患者で尿中LRGは腎病変が無い患者に比べ,腎病変が認められた患者の尿でより高く検出される傾向が見られた.SLEモデルマウスのNZ B/W F1マウスを用いた実験では腎病変を認めたマウスで腎臓でのLRG発現量がコントロールに比べ有意に上昇し,免疫染色の結果において,LRGの発現は近位尿細管上皮細胞に認められることが明らかになった.また,これらの個体では尿/血清LRG比が上昇することからLRGはループス腎炎の診断マーカーとして可能性があると考えられる.LRG発現機序の詳細については当日報告する.