日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P2-001 潰瘍性大腸炎関連遺伝子RNF186の解析
藤本 康介熊ノ郷 淳竹田 潔
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2015 年 38 巻 4 号 p. 319a

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抄録

  炎症性腸疾患と総称されるクローン病や潰瘍性大腸炎は世界的に患者数が増加している難病である.遺伝的な背景に腸内細菌などの環境因子が加わることで腸管炎症が引き起こされると考えられているが,未だ病態の十分な解明には至っていない.近年ゲノムワイド関連解析(GWAS)が盛んに行われ,疾患感受性遺伝子が数多く同定されている.今回GWASに基づいた潰瘍性大腸炎に関連する疾患感受性遺伝子RING finger protein 186(RNF186)の解析を行った.RNF186は大腸上皮細胞に高発現し,ユビキチンリガーゼ(E3)として働く.Rnf186欠損マウスでは,腸管上皮の透過性が亢進するだけでなく,デキストラン硫酸ナトリウムを用いた薬剤誘導性腸炎(DSS腸炎)の感受性が亢進した.新たにoccludinやLRPPRCがRNF186の基質であることを同定し,Rnf186欠損マウスでは腸管上皮でのoccludinの発現パターンの変化やLRPPRCのタンパク量の増加を認めた.過去の潰瘍性大腸炎患者を対象としたGWASではコーディング領域内のSNPが報告されていたため,そのSNPを反映させた変異マウスを作製したところ,Rnf186欠損マウスと同様にDSS腸炎の増悪を認めた.RNF186は腸管上皮細胞のタンパク質の恒常性を制御することで腸管炎症の発症に関わることが明らかとなった.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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