日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P2-005 抗AIE-75抗体陽性IPEX様症候群を呈したIgA単独欠損症の1女性例
星 奈美子孝橋 道敬山入 春香具 潤亜安冨 栄一郎足立 聡一郎大塚 崇史渡邉 大輔大井 充吉田 優早川 晶神保 圭佑小林 一郎東 健
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2015 年 38 巻 4 号 p. 321a

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抄録

  IgA欠損症はしばしば自己免疫疾患を合併する.我々はIgA単独欠損症に血小板減少性紫斑秒(ITP),自己免疫性溶血性貧血(AIHA),自己免疫性腸症(AIE)を合併した1症例を経験したので報告する.症例は16歳女性.X才時に下肢紫斑を認め,ITPおよびIgA欠損症と診断された.ステロイド投与にてITPの寛解を得たが,漸減・中止に伴い4年間で4回のITP再燃を繰り返し,経過中にAIHAや寒冷凝集素症も認められた.発症3年後のITP再燃時,ステロイド漸減中に水様性下痢を認め,高度の代謝性アシドーシスを伴う意識消失で当院小児科に緊急入院した.絶食,中心静脈栄養管理,整腸剤,止痢薬投与に反応せず,消化器内科で施行した上下部内視鏡検査では十二指腸球部から下行脚および終末回腸に著明な絨毛萎縮を,生検にて上皮アポトーシス,杯細胞減少等を認めた.血清中に正常腸管組織と反応する自己抗体を認めAIEと診断した.さらにWestern blotでIPEX症候群に特異的とされるAIE関連75kD抗原(AIE-75)に対する自己抗体が検出された.下痢はPSL 40 mg投与で速やかに改善した.IgA欠損症とAIE合併例の報告は検索範囲内で1例のみであり,標的抗原を明らかにしたのは本症例が初めてである.IgA単独欠損症がAIEおよび多彩な自己免疫疾患を呈するIPEX様症候群の基礎疾患となることが示唆された.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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