2015 年 38 巻 4 号 p. 326b
【背景】HLA-DRB1*07:01は抗リン脂質抗体症候群(APS)の疾患感受性遺伝子である.近年,我々はβ2-グリコプロテインI(β2GPI)/HLA class II複合体が抗β2GPI抗体の対応抗原であることを報告した.スタチン製剤はいくつかのAPSモデルで抗β2GPI抗体による向血栓細胞活性化を抑制し,血栓症抑制効果が期待されていたが,その機序は不明である.【目的】抗β2GPI抗体による血栓傾向に対するスタチン製剤の抑制的作用機序を解明する.【方法】不死化ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUEhT-1)とヒト単球系細胞(THP-1)にβ2GPIとHLA-DRA*01:01/DRB1*07:01(HLA-DR7)の遺伝子を導入した後,フルバスタチンを添加し,細胞表面のHLA-DRとβ2GPIの発現およびヒトモノクローナル抗β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(EY2C9)の結合能を解析した.APS自然発症ラットであるenv-pXラットにフルバスタチンを投与し,β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(aCL)を測定した.【結果】HUEhT-1とTHP-1の両細胞表面において,β2GPIの発現およびEY2C9の結合はHLA-DR7発現細胞で亢進していた.フルバスタチンの添加により,HLA-DRとβ2GPIの細胞表面への発現およびEY2C9の結合は抑制され,メバロン酸によりフルバスタチンの作用は拮抗された.またフルバスタチン投与によりenv-pXラットのaCLは有意に低下した.【結語】スタチン製剤はHLA class IIの発現低下を介した自己抗原提示の抑制効果を示すため,APSへの治療効果が予想される.