抄録
日本人の4人に1人は心臓病や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患で死亡しており,その発症機序を解明し,有効な治療法や予防法を開発することが切に望まれている.動脈硬化性疾患は慢性炎症性疾患であると考えられているが,炎症を負に制御するような制御性T細胞(Treg)と炎症を引き起こすようなエフェクターT細胞のバランスを,薬剤投与によりTreg側に傾けることにより,マウスにおいて動脈硬化形成を抑制することが示されている.しかし,抗体薬などの生物学的製剤の全身投与は,安全性およびコストの問題により臨床応用は困難である.動脈硬化モデルであるアポリポ蛋白E遺伝子欠損マウスの皮膚に紫外線(UVB)照射を行うことにより,Foxp3陽性Tregの誘導,エフェクターT細胞の免疫応答の抑制とともに有意な動脈硬化形成の抑制を認めた.薬剤投与によりFoxp3陽性Tregを特異的に減少させることができる易動脈硬化マウスにおいて,UVB照射による動脈硬化抑制効果は消失した.さらに,ランゲルハンス細胞を特異的に除去した易動脈硬化マウスにおいて,UVB照射によるTregの増加および動脈硬化抑制効果は消失した.以上より,UVB照射はランゲルハンス細胞の何らかの機能修飾を介してTregを誘導し,抗動脈硬化的に作用することが示された.皮膚からの動脈硬化予防という新規の予防・治療法の可能性を示すことができ,臨床応用が期待される.