日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P4-008 疾患特異的iPS細胞を用いた,強皮症皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン過剰産生の機序の検討
神人 正寿王 中志後藤 瑞生江良 択実福島 聡尹 浩信
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2015 年 38 巻 4 号 p. 332b

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抄録

  全身性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化を特徴とする疾患である.皮膚線維化の原因として,皮膚線維芽細胞におけるTGF-βの活性化とコラーゲンの過剰産生が生じていると考えられているが,その分子機序はいまだ不明である.最近,我々は強皮症患者の皮膚組織より培養された線維芽細胞から,倫理委員会で承認を受けた文書による同意を得てiPS細胞を樹立することに成功した.TGF-βシグナル関連分子の発現をPCR arrayを用いて比較したところ,強皮症由来iPS細胞では正常iPS細胞に比べてS100A8,Smad6およびTGFB2の発現が減少していた.また,強皮症由来iPS細胞を線維芽細胞に再分化させたところ,コラーゲンの過剰産生が正常化された.いくつかのインテグリンの発現異常も正常化していた.強皮症病変部皮膚由来のiPS細胞を用いた研究の報告は現時点では未だ存在しない.我々は本研究により,TGF-βシグナル関連遺伝子のうち強皮症iPS細胞に特異的な遺伝子発現異常と,再分化によって正常化する遺伝子発現異常,さらには正常化しない遺伝子発現異常を同定した.再分化によって強皮症線維芽細胞におけるコラーゲンの過剰発現が正常化したことから,この異常が遺伝子レベルで制御されており,インテグリンなど特定の遺伝子のepigeneticsの変化によって引き起こされている可能性が示唆された.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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