2015 年 38 巻 4 号 p. 338a
最近,がん免疫療法の治療効果が示されたが,効かない症例も多く,治療前や早期に治療効果を予測して,適切な患者選択など個別化治療を可能にするバイオマーカーの同定,それを制御する方法の開発が期待されている.本研究では,ビーズアレイ法を用いたがんワクチン投与前の血液サイトカインやケモカインを網羅的に測定し,腫瘍抗原特異的免疫誘導効果とがんワクチン後生存との相関を検討した.大腸癌の化学療法併用ペプチドワクチン臨床試験では,治療前のN/L比高値,CRP高値,血液IL6高値症例では遅延型生存延長効果が認められないことが示された.多変量解析ではIL6が独立因子であった.前立腺がんのペプチドワクチン臨床試験では,治療前血液IL6とIL8高値がワクチン後予後不良と相関し,ペプチド特異的なT細胞とIgG抗体の誘導は予後良好と相関した.多変量解析ではIL8と抗原特異的免疫誘導が独立因子であり,両者の併用で生存との相関が上がった.IL6/IL8と免疫誘導には相関が認められず,IL6/IL8は免疫誘導以降の抗腫瘍免疫応答に影響する可能性が示唆された.特定の薬剤の投与は,マウス腫瘍モデルでIL6やIL8を低下させて免疫状態を改善させる可能性が示され,今後,臨床試験での検証が期待された.本研究では血液IL6やIL8ががんワクチンのバイオマーカーになり得ること,その制御により治療効果を改善できる可能性が示された.