2015 年 38 巻 4 号 p. 338b
近年,抗PD-1抗体治療は,様々ながん種で劇的な臨床効果を示し,T細胞の共刺激分子を標的とした治療の有用性が示唆されている.TIGITは,腫瘍浸潤T細胞(TIL)を含む活性化T細胞に発現する免疫抑制的共刺激分子であるが,抗腫瘍免疫応答における役割は解明されていない.我々は,悪性黒色腫の抗腫瘍T細胞応答のエフェクターフェーズにおけるTIGITの役割を解明し,がん免疫療法におけるTIGITシグナル阻害の有用性を検証した.TIGITのリガンドであるCD155は多くのヒトがん細胞で発現しており,IFN-γで増強された.悪性黒色腫におけるCD155の強制発現やノックダウン実験,抗TIGIT抗体による阻害実験により,がんで発現するCD155は,腫瘍抗原特異的T細胞にTIGITを介して抑制的に働くことが分かった.また,抗体によるTIGITとPD-1シグナルの同時阻害は,相乗的にT細胞の機能を回復させた.さらに,ヒトがん組織より培養したTILでは,TIGIT陽性分画は陰性分画に比べ,腫瘍特異的T細胞を多く含み,その機能は抗TIGIT抗体でさらに増強された.以上より,悪性黒色腫で,腫瘍特異的T細胞はTIGITを発現しているため,腫瘍に発現するCD155により機能が抑制されている事,また,CD155/TIGITシグナルは治療標的として有望で,抗PD-1抗体との併用効果も期待できる事が示唆された.