抄録
辺縁系脳炎は辺縁系を亜急性におかす疾患で,記憶障害(海馬)・情動異常(扁桃体)・行動異常等を来す疾患である.一部の症例は自己免疫学的な機序で生じる.視神経炎の一部は抗MOG(myelin-oligodendrocyte glycoprotein)抗体陽性を呈する.本抗体はoligodendrocyteが標的となり,視神経,視交叉から視索を障害し,視機能低下を呈する.今回,辺縁系脳炎罹患後,視神経炎を認め,時系列をおって自己抗体を解析した症例を経験した.
症例は9歳女児.発熱,傾眠傾向,片麻痺,発語消失,記憶障害を主訴に来院.髄液・血清で抗NMDA抗体が陽性であり,辺縁系脳炎と診断.γグロブリン大量療法(IVIG)とメチルプレドニゾロンパルス療法(IVMP)で加療し,5か月間かけてプレドニンを漸減,中止.中止後2週間で右目の痛み,見えにくさを訴え来院.視神経乳頭浮腫,視力低下(手動弁),視神経乳頭の造影効果を認め右側視神経炎と診断.SPECT検査,脳波検査,抗NMDA抗体も陰性,抗アクアポリン-4抗体は陰性,抗MOG抗体は血清で強陽性,髄液で陽性であり,視神経炎と診断した.IVIG+IVMPにて加療,視機能は改善した.抗MOG抗体について,時系列をおって解析すると,辺縁系脳炎発症時から陽性であった.
本症例の経過は自己免疫反応の腑活による抗体産生が刺激を受け,抗NMDA抗体,抗MOG抗体をはじめとした様々な自己抗体が産生され,異なる表現型を来している可能性を示唆している.