2015 年 38 巻 4 号 p. 359a
【目的】当院で診断治療された抗ARS抗体陽性患者の臨床的特徴について検討する【方法】2003年~2015年に当院に通院加療された抗ARS抗体陽性患者33例を対象として臨床症状や治療経過について後ろ向きに解析した.抗ARS抗体測定はELISA法及び各抗体については保存血清を用いたHeLa細胞を抗原とするRNA免疫沈降法及び蛋白免疫沈降法により抗体を検出した.【結果】平均年齢は55.3±13.6歳(平均±標準偏差),男性7例,女性26例,多発性筋炎(PM)15例,皮膚筋炎(DM)18例であった.抗ARS抗体の内訳は抗Jo-1抗体18例(54%),抗EJ抗体7例(21%),抗PL-7抗体6例(18%),抗PL-12抗体1例(3%),抗OJ抗体1例(3%)であった.間質性肺疾患(ILD)の合併は27例(82%),関節炎症状は18例(55%)に認めた.またRaynaud症状は15例(45%)に見られた.他の膠原病との合併は10例に見られた(強皮症5例,RA4例,シェーグレン症候群4例,重複含む).4例は無治療,ステロイド内服加療は9例,ステロイド内服+パルス療法は4例,ステロイド内服+免疫抑制剤療法は6例,ステロイド内服+パルス+免疫抑制剤加療は9例で施行された.【結論】抗ARS抗体がより簡便に測定できるようになり筋炎治療における症状,治療,予後などの予測が可能となってきている.しかしまだ個々の抗ARS抗体については一部施設でのみ測定可能である事や,陽性例の中でも症状や重症度に大きな差が見られており,更なる臨床的知見の蓄積が必要であると思われる.