抄録
【症例1】73歳男性.胸部X線で肺炎と診断され当院紹介入院.胸部CTで両肺にスリガラス影を認め異型肺炎が疑われた.抗生剤投与にても改善乏しく,βDグルカン169.7pg/mlと高値よりニューモシスチス肺炎と考えST合剤内服を開始.HIV-1WB法陽性,RNA定量71000copy/ml,リンパ球数400/μl,陽性Tリンパ球数50/μlから後天性免疫不全症候群と診断.皮疹のためペンタミジン点滴に変更.改善後に抗HIV治療目的で他院転院.【症例2】54歳男性.胸部X線で肺炎と診断され抗生剤治療を受けるも改善せず当院紹介入院.胸部CTで両肺にスリガラス影を認め,酸素化不良のため人工呼吸管理となりステロイドパルス療法を施行.βDグルカン322.1pg/mlと高値より判明しニューモシスチス肺炎と考えST合剤経管投与を開始.HIV-1WB法陽性,RNA定量230000copy/ml,リンパ球数160/μl,CD4陽性Tリンパ球数20/μlから後天性免疫不全症候群と診断.皮疹のためペンタミジン点滴に変更.改善後に抗HIV治療目的で他院転院.【臨床的意義】自己申告であるがともに感染経路は不明である.患者の免疫機構とHIVが拮抗した状態は平均10年と言われている.生来健康で病院を受診していなかったため無症候期のリンパ球減少が発見できなかったと推察される.健常者に発症したと考えられる肺炎でも異型肺炎の場合,後天性免疫不全症候群の可能性を考える必要がある.