2015 年 38 巻 4 号 p. 376a
【症例】66歳女性:関節リウマチ(RA)Stage IV Class 2抗CCP抗体(+)リウマトイド因子(+)【経過】45歳時RA発症.メトトレキサート(MTX)中心に治療されるも活動性残存.61歳時に肺癌(Stage IIIA,adenocarcinoma)発症.手術および術後補助化学療法施行.化学療法施行中はRAの活動性は抑えられていたが,終了後再燃.手術前から中止していたMTXを再開し,次第に増量していたが,活動性を抑えきれない状態で63歳時に肺癌再発し再びMTX中止.その後肺癌に対してALK阻害薬のクリゾチニブ(CRZ)を導入したところ,まもなくRAの疾患活動性は低下し,他覚的所見は消失.その後CRZ中止するとRAの病勢が再燃するもCRZ再開と共に再び安定.CRZがRAに奏功していると考えられた.66歳時に肺癌悪化,同じALK阻害薬のアレクチニブ(ALC)に変更したところ,肺癌は改善するもRAの病勢は再燃.現在もDMARDs増量して対応中.【考察】CRZ,ALCは共にALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に用いられる経口ALK阻害薬である.ALCがほぼALK選択的であるのに対し,CRZはc-METも共に阻害する.本例の経過からはRAにはCRZのc-MET阻害作用が有効であったと推測される.c-METは肝細胞増殖因子(HGF)の受容体であり,HGF/c-METとRAの関係についてはいくつかの文献的報告がある.本例はc-METがRAの新規治療標的になる可能性を示唆する興味深い一例である.