日本臨床免疫学会会誌
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総説
自然免疫シグナルによる腸管からの身体恒常性維持機構
辻 典子閻 会敏渡邉 要平
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2015 年 38 巻 6 号 p. 448-456

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抄録
  腸管免疫学や腸内細菌学が近年のトレンドとなり,暮らしへの応用が模索されている.本稿では,優勢な小腸常在菌である乳酸菌の核酸や,真菌を構成するβ-グルカンなど微生物成分が,食品成分としても腸管免疫に働きかけ,抗炎症機能や抗原特異的免疫応答の増強機能に直結する例を示す.乳酸菌は2本鎖RNAを豊富に含み,樹状細胞のエンドソームに存在するToll様受容体TLR3を刺激してインターフェロンβの産生を誘導する.さらに,このインターフェロンβの抗炎症機能がはたらき腸炎を予防する.TLR3遺伝子欠損マウスや無菌マウスなど腸内環境因子から適切な自然免疫刺激を受けない個体では,生体恒常性維持機能が未成熟となり,易感染や炎症の増悪が観察される.しかしこの可塑性は一方で,腸管を介した自然免疫シグナルの導入により,生理機能を改善できる可能性も示している.このような背景から,小腸における自然免疫シグナルの受容と伝達機構の解明は,健康維持や疾患の予防・治療技術の可能性を拡げると期待される.
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© 2015 日本臨床免疫学会
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