日本臨床免疫学会会誌
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総説
全身性自己免疫疾患の臓器合併症の予後と免疫治療の進歩
保田 晋助河野 通仁嶋村 抄苗栗田 崇史小谷 俊雄渥美 達也
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2016 年 39 巻 1 号 p. 8-17

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抄録
  全身性自己免疫疾患に合併する臓器病変に対する有効性の明らかな治療法は少なく,解決しなければならないアンメットニーズが存在する分野である.特に,ループス腎炎,精神神経ループス,多発性筋炎/皮膚筋炎や強皮症に合併する間質性肺病変はしばしば重篤となり生命予後を規定する.症例の少なさや病態の重篤さなどからランダム化臨床研究が難しい事が多い.こうしたなか,ループス腎炎に関しては,シクロホスファミド間欠静注療法がミコフェノール酸モフェチルなどの経口免疫抑制薬に代替されつつあり,さらに生物学的製剤による治療研究が行われるなどようやく新たな展開を向かえつつある.一方,皮膚筋炎に合併する間質性肺病変については急速進行性で予後不良の一群があり,ランダム化比較試験は組みにくい.強皮症合併間質性肺病変に対して,シクロホスファミドの効果は限定的であるが,造血幹細胞移植は治療関連死の問題がある.これらループス腎炎以外の領域でもミコフェノール酸モフェチルや生物学的製剤による治療効果が少しずつ示されている.本稿では著者らの経験も紹介しながら,膠原病患者の臓器合併症の予後と難治性病態に対する免疫抑制治療の発展・展望について概説したい.
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© 2016 日本臨床免疫学会
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