日本臨床免疫学会会誌
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総説
がん免疫療法と免疫記憶
村田 憲治塚原 智英鳥越 俊彦
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2016 年 39 巻 1 号 p. 18-22

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抄録
  ヒトには免疫応答を記憶する機構が備わっており,感染症の罹患や重症化を予防する重要な役割を担っている.一方,T細胞の免疫記憶構築システムに関する多くの研究は,マウスモデルを用いて行われている.しかし,ヒトの系とマウスの系では相違点が多く,ヒトにおける免疫記憶機構を解明する必要がある.さらに,腫瘍免疫の分野においても免疫記憶の重要性は指摘されているが,担がん個体では,がん抗原の長期的な暴露によってT細胞は疲弊し,腫瘍抗原特異的なメモリーT細胞が維持されにくいとされている.よって,腫瘍を長期的に拒絶するためには,腫瘍抗原特異的なメモリーT細胞を長期間保持することが肝要である.また,腫瘍に対する養子免疫療法では,分化の進んでいないメモリーT細胞が長く体内に残存して抗腫瘍効果を高めると考えられている.そこで,近年は幹細胞の性質をもったヒトメモリーT細胞集団の養子免疫療法への有効性が期待されている.著者らが同定した新たなヒトメモリーT幹細胞集団は,これまでのメモリーT細胞よりもさらにナイーブT細胞に形質が近く,化学療法耐性といった幹細胞の性質をもつ細胞である.本総説では,この新しいT細胞集団を紹介するとともに,がん免疫療法における免疫記憶の重要性について概説する.
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© 2016 日本臨床免疫学会
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