抄録
症例は77歳 女性.15年前,他院にて関節リウマチ(RA)と診断.メトトレキサート(MTX)8 mg/週で効果不十分にて,6年前よりエタネルセプト(ETN)50mg/週にて治療された.3年前に当院紹介され,アダリムマブ(ADA)40mg/2週とMTX 8 mg/週にて低活動性を維持していた.約1ヶ月前より湿性咳嗽が出現,2週間前外来にて胸部X線上,肺野に浸潤影を認めた.ADA, MTX中止,レボフロキサシン内服にて軽快せず当科入院した.末梢血好酸球増多(2539/μL),血清総IgE(538.0 IU/ml)とアスペルギルス特異的IgE,アスペルギルス沈降抗体の上昇を認めた.気管支鏡検査にて鋳型状の喀痰あり,病理組織検査にて好酸球の集蔟,Grocott染色陽性の菌糸を認めた.以上よりアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)と診断した.プレドニゾロン(PSL)0.5mg/kg/日,イトラコナゾール200mg/日を開始したところ,3ヶ月後には肺浸潤影は消失した.文献検索をした限りでは,ADA投与中のRAにABPAを合併した報告は認めず,本例が初報告と考えられた.biologicaldisease-modifying antirheumatic drugs(bDMARDs)投与中の肺合併症の鑑別について示唆に富む症例と考え報告する.