抄録
Basidiobolus属は、従来、接合菌類ハエカビ目に分類されていたが、近年の分子系統学的解析により、他の接合菌類とは独立した系統群であることが明らかとなり、Basidiobolalesとして扱われている. この菌は, 土壌・リター・両生類と爬虫類の排泄物から分離されるが, 深在性皮膚真菌症の病原菌として分離されるものもある. そして, ヒト由来の株とその他の天然物由来株とは, 接合胞子の表面形状, 37C以上で生育の可否, また, rDNAの RFLP, アイソザイム変異などからも, 互いに区別できることが報告されている. 本研究では, 演者らの保存株についてrRNA 遺伝子塩基配列を解析し, さらにGenBankから取得した既知塩基配列データと合わせて, 新たな系統解析をおこなった. その結果, 1株の例外があったが, ヒト由来株は単一のClade に含まれることが示された. また, 10, 15, 20, 25, 30, 37, 40Cでの生育を比較したところ, ヒト由来株は37C以上で生育できるが, 天然物由来の分離株は1株を除いて37C以上では生育できなかった. また, 37Cで生育しなかった天然物由来のB. ranarum株では, 25Cで生育しているプレートを37Cに移すことにより,それまで糸状に成長していた菌糸先端細胞が球形の細胞に形態が変化することが示された. これは, 正常成長では、核分裂のあとに菌糸の分岐と成長を伴うのに対して, 高温処理により分岐が起こらず核分裂のみが進行した結果と考えられる. また, 37Cでの培養株を25Cに戻すと, 球形細胞から糸状細胞が伸長してくることが観察された. したがって, この形態変換は可逆的であると考えられる.