日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム2-1 がん患者における免疫病態の最新知見とがん治療への応用
西川 博嘉
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2016 年 39 巻 4 号 p. 292

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抄録

  免疫チェックポイント分子に対する阻害抗体の開発により,がん免疫療法の臨床応用が進んでいる.しかし,免疫チェックポイント阻害剤単剤で臨床効果が認められる患者は20-30%程度であるため,レスポンダーを識別するバイオマーカーの同定,およびノンレスポンダーで過剰もしくは不足している免疫応答を解明し,より効果的ながん免疫療法の開発が求められている.我々は抗腫瘍免疫応答の本態を明らかにするため,がん細胞の遺伝子変異に伴って生じる抗原(Neoがん抗原)とがん細胞内に存在する自己抗原由来で多くのがん患者で共通してみられる抗原(Sharedがん抗原)に対する免疫抑制機構について検討した.Sharedがん抗原特異的CD8+T細胞は,制御性T細胞により抑制され,不応答(抗原刺激に対してサイトカイン産生や細胞増殖をしない)状態に陥ることが明らかになった.一方でこれらの免疫抑制機構はNeoがん抗原特異的CD8+T細胞に対しては作動せず,十分な活性化が誘導された.以上より,Neoがん抗原が多くみられるがん患者では抗腫瘍免疫応答はready to goの状態にあり,抗PD-1抗体などで局所の免疫抑制を解除することによって十分な臨床効果が認められるが,Sharedがん抗原が多い患者では,免疫抑制ネットワーク,とりわけ制御性T細胞を標的とするような新たながん免疫療法との併用の必要性が示唆された.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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