日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同シンポジウム
6学会合同シンポジウム1 アジア人のチオプリン高感受性とNUDT15遺伝子多型の関連
安藤 朗
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2016 年 39 巻 4 号 p. 303

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抄録

  【背景】アザチオプリンなどのチオプリン製剤は,炎症性腸疾患(IBD)をはじめとする免疫疾患の治療において重要な薬剤である.一方,アジア人は欧米人に比べ低容量でも白血球減少を来しやすいことが知られている.我々は,チオプリン関連白血球減少とNUDT15遺伝子多型について,日本人IBD患者を対象に検討した.【方法】健常人103人,チオプリン内服歴のあるIBD患者161人の末梢血単核球よりDNAを採取して,TaqMan PCR法でNUDT15 R139C(rs116855232)多型を検討した.【結果】NUDT15 C/C(wild type),C/T,T/T遺伝子型はそれぞれ80.7%,18.2% and 1.1%であった.45人(27.9%)のIBD患者に白血球減少(WBC < 3,000/μl)を認め,C/TとT/T遺伝子型と白血球減少に有意な相関を認めた(P = 1.7 × 10−5).各遺伝子型間にチオプリンの有効代謝産物6-TGN濃度の差は認めなかった.2週目,4週目の平均白血球数は,C/C遺伝子型と比較して有意にC/T,T/T遺伝子型で低値であった.T/T遺伝子型の2人の患者は,両者とも白血球1000以下となりカツラが必要な重度の脱毛を来した.多変量解析ではNUDT15 R139Cが独立した唯一の白血球減少と関連する因子であった(P = 0.001).【結果】NUDT15 R139Cはアジア人の高チオプリン感受性と関連する因子であり,NUDT15多型に基づいたチオプリン製剤の個別化投与に有用である.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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