2016 年 39 巻 4 号 p. 304
本邦皮膚科領域においても,2010年に乾癬に対してバイオ製剤が導入され,従来難治であった皮疹,爪,関節炎に対して飛躍的な効果がもたらされた.とくに関節症性乾癬は,治療成績の向上とともに俄かに脚光を浴びてきた.抗TNF製剤に加え抗IL-12/23p40抗体,抗IL-17製剤が使用可能になり,さらにIL-17受容体抗体も参入する予定である.どのような症例に対して使い分けていくかは未だ手探りであり,経験,二次無効例,効果不十分例,あるいは副作用が生じた症例に対してバイオスイッチをしているのが現状である.乾癬の皮疹に関しては,局面の大きさや性状により,治療に対する反応性の差異が検討され始めたが,他の因子(発症年齢や家族歴,併存症の有無,爪や関節病変の程度)と,標的分子との関連性に関しては,まだこれからの課題である.乾癬以外では,現在国内では未承認であるが,近い将来使用可能が望まれる皮膚疾患として,掌蹠膿疱症性骨関節炎,SAPHO症候群,壊疽性膿皮症,化膿性汗腺炎,サルコイドーシス,multicentric reticulohistiocytosisなどが候補として挙げられる.とくに,重症例に対しては,他の代替治療薬が望めない場合も多いので期待が高いが,どのような病態を有するものがバイオの適応になるかは今後の検討課題である.本講演では,乾癬,関節症性乾癬,およびその類症において,バイオ製剤使用の現状と将来への期待について,私見を交えて述べる.