日本臨床免疫学会会誌
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6学会合同シンポジウム
6学会合同シンポジウム3 中枢神経系の免疫性病態の多様性
大木 伸司
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2016 年 39 巻 4 号 p. 305

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抄録

  多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)は,脱髄を主徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であるが,その症状は多様であり,病態に応じた治療が求められている.第一にMSには,再発寛解型MS,二次進行型MS,および一次進行型MSなど治療反応性の異なる複数の病型が知られており,とくに進行性の病型では,脱髄に加えて神経変性を認めるなど病態が多様化する.最近私たちは,それぞれの病態に関わる2種類の病原性T細胞の存在を明らかにした.さらに以前はMSの一病型とされていた視神経脊髄炎は,プラズマブラスト由来の抗AQP 4抗体によるアストロサイト障害に起因する別の疾患であることが示された.私たちは,MS患者のなかにもプラズマブラスト陽性例があることを見出し,その多くはMS治療薬であるIFN-βが無効であることを報告している.このように複雑な病態スペクトラムを形成するMSの個別化治療を実現するためには,病態形成に関わる免疫応答の変化を丁寧に調べていく必要がある.私たちは,MS病態の多様性を理解するために,免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞に着目し,マウスおよびヒトの両面から解析を進めている.多様なMS病態に関わる複数の病原性T細胞の性状解析と,シーズ探索の試みについて紹介する.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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