抄録
2011 年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って生じた汚染土壌にヒマワリ,アマランサスなどの植物を植えて放射性セシウムを吸収させることで除去できるかどうかが緊急に試された.しかし,除去量はごくわずかで,試された品種,条件の範囲では実用化は困難と判断された.一方で,福島市などの一部の水田では当初の想定を大きく上回る放射性セシウム濃度の玄米が収穫されるなど,条件によって植物体への移行量は大きく変化することがわかった.また,高吸収とされている植物種・品種は他にも数多くあり,それらの能力は未検討のままである.植物の吸収による放射性物質除去技術の実用化のためには,土壌からの吸収メカニズムの解明に基づいて,さらなる高吸収種・品種を探索し,適切な栽培条件を明らかにすることが必要である.