日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3-5 T細胞 がん免疫療法におけるチェックポイント阻害剤の光と影
玉田 耕治
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2016 年 39 巻 4 号 p. 327

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抄録

  近年,がんに対する免疫療法は大きな発展を遂げ,外科療法,化学療法,放射線療法に並ぶがんの標準療法としての立場を確立しつつある.その原動力が免疫チェックポイント阻害剤であり,これまでに承認された薬剤として抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体が知られている.免疫チェックポイント阻害剤は,がん微小環境における免疫抑制メカニズムとして作用する分子に対して阻害活性を有する抗体薬であり,内在性の抗腫瘍T細胞応答を増強することで治療効果を発揮する.現在,進行性の悪性黒色腫と非小細胞肺がんの治療薬として承認され,海外では腎細胞がんに対しても承認されている.また,ホジキンリンパ腫や頭頸部腫瘍を含む多くのがん種に対して臨床試験が実施されており,有望なデータも報告されている.このように免疫チェックポイント阻害剤はがん治療に新しい希望をもたらしたが,その一方で未だ多くの課題も含有している.例えば,5-10%程度の症例において重篤な治療関連有害事象が発症し,それらは自己免疫応答の誘導による間質性肺炎や大腸炎,内分泌障害などである.また,単剤での奏効率は20-30%程度であり,効果が得られる症例を見極めるバイオマーカーの探索が必要である.今後,治療効果をさらに高めるためには,他のがん治療法との組み合わせによる複合的がん免疫療法の確立も求められている.本講演では,がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の光と影について概説したい.

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