日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー5 流産,妊娠高血圧症候群における母子間免疫トレランスの破綻
齋藤 滋
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2016 年 39 巻 4 号 p. 336

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抄録

  胎児は母体にとり半異物(semiallograft)であるが,妊娠時には免疫トレランスが存在するため,胎児は拒絶されることなく妊娠が維持される.これらトレランスの誘導に重要な役割を果たすのが制御性T細胞(Treg)である.興味あることに精漿中に含まれる父親抗原により,着床前には子宮所属リンパ節中に父親抗原特異的Treg細胞が増加し,着床後には直ちに子宮で父親抗原特異的Tregが増加し妊娠が維持される.Tregには胸腺由来と胸腺外Tregが存在するが,胎盤を有する動物では胸腺外Tregが妊娠維持に重要である.また妊娠中に母体から少量の血液が胎児に流入し,ミクロキメリズムとなるが,母親由来のMHCに対して胎児は免疫寛容を獲得する.この母子間免疫寛容の破綻が自己免疫疾患の一因となる.母親のMHCと一致する男性との妊娠では,トレランスが生じやすい.一方,アロ妊娠で妊娠中にTregを除去すると流産が生じる(マウスの系).ヒトにおいても胎児染色体正常の流産例では妊娠子宮内でのTregが減少しeffector T細胞が増加している.また,胎児が完全異物である場合(卵子提供妊娠,胚提供妊娠)や精漿の暴露が少ないハネムーンベビーの場合,妊娠高血圧症候群の発症率が高くなり,精漿によるTregの誘導が不十分である事を示唆する.事実,妊娠高血圧腎症ではTregの数も機能も減少している.

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