2016 年 39 巻 4 号 p. 346a
基礎免疫学の進歩は,新たな分子標的の解明とその特異的阻害による革新的な治療戦略を創出した.関節リウマチ(RA)に対するTNF-αやIL-6などのサイトカイン,CTLA4-Igによる共刺激シグナルを阻害する生物学的製剤の成功はその好例である.さらに近年,JAKなどの細胞内シグナル分子を制御する低分子化合物によるRAへの優れた治療効果が示された.RAは患者ごとに臨床像や治療反応性が多様であるため,分子標的治療の需要はさらに拡大するものと思われる.一方,免疫系は感染防御や抗腫瘍作用などの生命現象に不可欠なシステムであり,免疫系を抑制することによって感染症や一部の悪性腫瘍などのリスクが上昇する.当科ではNIH/FOCISによるヒト免疫プロジェクトの標準化プロトコールに則り,RA患者末梢血における網羅的免疫細胞解析を実践してきた.その結果,作用機序の異なる分子標的療法は,その標的分子の違いによって自然免疫系および獲得免疫系の双方に多様な修飾を与えることが明らかとなった.このことは免疫制御治療による有効性のみならず,特定の分子制御で生ずる安全性を検証していくことの重要性を示唆している.以上のように,臨床免疫学に於いて,免疫制御治療の実践とエビデンスの蓄積が特定の分子の常態と病態における重要性を再認識する契機となっており,斯様な基礎研究と臨床研究のトランスレーションにより免疫制御治療の妥当性を検証していくことが求められる.