日本臨床免疫学会会誌
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WS5-3 自己免疫疾患としての天疱瘡の病態
山上 淳
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2016 年 39 巻 4 号 p. 356a

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抄録

  天疱瘡は自己抗体によって粘膜および皮膚に水疱を形成する自己免疫疾患である.標的抗原は,表皮細胞間の接着に不可欠なデスモゾームを構成するデスモグレイン(desmoglein; Dsg)である.細胞接着を失った表皮細胞が壊死に陥ることなく水疱内に投げ出される棘融解(acantholysis)が,天疱瘡に特徴的な病理組織所見である.診断には,直接蛍光抗体法でIgGが患者皮膚の表皮細胞間に沈着していることを示す必要がある.臨床症状と病理組織所見から,尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡,その他の天疱瘡に分類されるが,免疫組織学的に特に興味深いのは,腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus; PNP)であろう.その病変の組織像は,自己抗体によって生じる棘融解が見られると同時に,皮膚または粘膜の基底膜部に液状変性と真皮浅層のリンパ球浸潤を認め,薬疹や膠原病,GVHDの際に見られる苔癬型反応(interface dermatitis)を呈する.近年,天疱瘡モデルマウスを用いた研究で,Dsg3に反応するT細胞がinterface dermatitisを起こすことがわかってきた.PNPでは,Dsg3に対する液性の自己免疫による棘融解が生じていることを考えると,interface dermatitisについてもDsg3に対する細胞性の自己免疫機序で生じている可能性が示唆される.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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