日本臨床免疫学会会誌
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WS5-2 1型自己免疫性膵炎の組織評価と問題点
内田 一茂岡崎 和一
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2016 年 39 巻 4 号 p. 355b

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抄録

  自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis; AIP)という疾患概念は,1995年にYoshidaらが提唱された疾患概念であり,2001年にHamanoらによって高IgG4血症がこの疾患に特異的であることが報告され,本疾患は世界的に注目される疾患となった.AIPは,IgG4の関与する1型と好中球病変が主体の2型に分類され,現在では1型AIPはIgG4関連疾患の膵病変と考えられている.IgG4の役割は不明であるが,その産生機序にはTh2サイトカイン,制御性T細胞などの獲得免疫,Toll-like receptor(TLR)やNOD-like receptor(NLR)に代表される自然免疫反応など様々な異常が関与している可能性が示唆されている.

  1型AIP特に限局型の診断には苦慮する例が存在する.EUS-FNAは膵疾患の診断を大きく変えたと考えるが,検体の採取量には限界があり診断が困難な理由の一つと考えられる.我々は,膵癌周囲にもIgG4陽性細胞が認められること,2型AIPは組織学的にはGranulocytic Epithelial Lesionを伴う好中球浸潤を特徴としているが小葉内膵管周囲の好中球浸潤については1型2型では差がないことを見出した.

  このようにAIPの診断には,多くの問題点が残されているのが現状であり,今後の更なる研究と症例の蓄積が必要と考えられる.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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