2016 年 39 巻 4 号 p. 365
関節リウマチ(RA)ではリウマトイド因子(RF)が高率に検出されることが知られてきたが,抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)が疾患特異自己抗体として同定され,環状シトルリン化ペプチドを用いた測定系が広く普及している.これら自己抗体は分類基準に含まれるが,感度は80%程度で,RA以外の疾患や健常人で陽性となる場合もあり慎重な解釈が求められる.一方,自己抗体はRA発症の10年以上前から陽性となることが報告され,遺伝素因に喫煙,歯周病,気道病変などの環境要因が加わってACPAが産生され,反応エピトープの拡大,抗体価上昇を経て滑膜炎の発症に至る自然経過が提唱されている.早期診断では他疾患の除外が重要で,特に全身性エリテマトーデスなど他の膠原病の鑑別に抗核抗体検査と染色パターンや抗体価に基づいた特異自己抗体検査が有用である.自己抗体は予後不良因子として挙げられ,ACPA陽性,特に高値陽性はその後の急速な関節破壊進行を予測する指標となる.また,自己抗体は治療薬の効果予測に有用な可能性が示されており,TNF阻害薬はACPAやRFの有無で一定の傾向はないのに対し,アバタセプトはACPA陽性,特に高値陽性例で治療効果が高いことが報告されている.RFは緩徐ながら疾患活動性と相関するが,ACPAは疾患活動性指標にならない.自己抗体検査の活用はRA診療の最適化にきわめて有用である.