2016 年 39 巻 4 号 p. 387a
【背景】若年性特発性関節炎(JIA)で本邦にて承認されている生物学的製剤は,2016年5月現在トシリズマブ,エタネルセプト,アダリムマブの3剤しか存在しない.このため,難治性JIAでこれら3剤が無効な症例はしばしば当面の治療が難渋し,複数の他の疾患修飾性抗リウマチ薬の併用を余儀なくされる.【目的】抗TNF製剤のうち負荷量投与が可能なセルトリズマブペゴル(CZP)が,難治性JIAに有効かつ安全に投与できるか,また患者のQOLを保つことが可能かを検討した.【対象と方法】対象は,複数の生物学的製剤が無効で,本剤にスイッチした16歳以上の移行期JIA患者5例(22.0±3.7歳).投与開始時から52週までの,圧痛・腫脹関節数,患者VAS,医師VAS,血液検査所見(CRP,赤沈値,MMP-3等),併用薬(プレドニゾロン,メトトレキサート,他の疾患修飾性抗リウマチ薬)の使用量の変化について経時的に観察した.【結果】全例とも,投与開始12週までに上記症状,諸血液検査所見が軽快し,併用薬も一定量の減量を図ることが出来た.また,重篤な有害事象も発生せず,QOLの改善が認められた.【結論】CZPは小児適応を取得していないため,16歳未満のJIA症例には使用できないが,難治性移行期症例には有効かつ安全な薬剤であることが示唆された.今後も使用症例を増加して,移行期症例の本剤の知見を蓄積していきたい.