2016 年 39 巻 4 号 p. 393a
PD-L1は免疫チェックポイント分子PD-1のリガンドであり,主に抗原提示細胞や悪性黒色腫,肺がん等の様々な癌組織に発現している.その発現は,癌細胞の免疫逃避に関与していることが知られており,近年,抗PD-1抗体が免疫チェックポイント阻害薬として製剤化された.癌幹細胞は主要な治療標的であるが,その免疫逃避機序については不明の点が多い.私たちは乳癌幹細胞におけるPD-L1の発現とその制御機構について解析した.免疫組織染色及びフローサイトメーター解析の結果,MCF7およびMDA-MB-469乳癌細胞のSpheroid形成細胞でPD-L1の発現増強が認められた.この発現はAKT阻害剤によって抑制されることから,PI3K/AKT pathwayの関与が示唆された.また,乳癌原発巣70症例およびリンパ節転移巣30症例に関して,PD-1, PD-L1の発現を解析した.その結果,PD-L1の発現は,原発巣よりもリンパ節転移巣において頻度が高いこと,PD-L1陽性転移巣周囲には,PD-1陽性T細胞の浸潤頻度が高いことが判明した.乳癌幹細胞の免疫逃避およびリンパ節転移にはPD-L1の発現が関与している可能性が示唆された.