2016 年 39 巻 4 号 p. 398b
多発性筋炎(PM)モデルを用い,我々は,再生筋線維が炎症性サイトカインを産生して筋局所の自然免疫活性化を担い,自己反応性キラーT細胞と協調して自己免疫性筋炎を発症させることを示した.そして,PM/皮膚筋炎(DM)患者では,遺伝的に筋局所の自然免疫が健常人より活性化しやすいと考え,まず,ヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)クローンに筋原生転写因子MyoDを強制発現させたサブクローンが筋細胞へと分化する際,再生筋線維と同様のサイトカインを産生することを示した.MyoDのゲノムへの導入箇所や数は細胞変化に影響しうるため,MyoD-hiPS細胞を用いて多因子疾患のPM/DMと健常人との遺伝的特性の差を評価するには,無数のサブクローンから成るバルクが最適と考え,MyoD-hiPS細胞バルクの樹立と筋細胞分化を目指した.
hiPS細胞を培地Aと培養基質Bで培養中に,Fugene HDを用いてMyoDを含むドキシサイクリン(Dox)誘導性ベクターとネオマイシン耐性遺伝子を導入し,既存のエレクトロポレーション法の時より数十倍以上のネオマイシン耐性MyoD-hiPS細胞サブクローンから成るバルクを得た.従来の筋分化条件と異なり,Dox誘導翌日にMyoD-hiPS細胞バルクのMyoD強発現分画をFACSで回収し,その細胞集団をDox入り筋分化培地で培養したところ筋細胞へと分化した.トランスフェクション試薬の低い細胞毒性により目的のMyoD-hiPS細胞バルクを樹立でき,筋分化条件の改良で筋細胞への分化に成功した.