日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P1-57 当科で家族性地中海熱と診断された7例の症例検討
荻田 千愛佐野 統松井 聖北野 将康東 直人関口 昌弘西岡 亜紀森本 麻衣田村 誠朗吉川 卓宏古川 哲也横山 雄一谷 名東 幸太壷井 和幸賀来 智志槇野 秀彦田所 麗藤原 誠子
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2016 年 39 巻 4 号 p. 403a

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抄録

  家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever, FMF)は周期性の発熱と無菌性漿膜炎発作を繰り返す遺伝性自己炎症性疾患であり,本邦でも責任遺伝子MEFV(Mediterranean fever)の同定により,遺伝子解析にて多数の症例が報告されている.当院の外来でも感染症,自己免疫疾患,悪性腫瘍を除外した上で,短期間の発熱や腹痛発作を繰り返す症例においては遺伝子解析の取り組み,FMFの治療薬とされるコルヒチンの治療効果判定を行っている.今回,遺伝子変異を認め,臨床所見とコルヒチン投与で症状の改善を得たことでFMFと診断された7例の臨床経過を辿り,FMFの病態解析を行った.7例共に性別は女性で,発症年齢もFMFの90%が20歳以下とされているが,2例を除いて初発が20歳代であった.本来,FMFは常染色体劣性遺伝を示す遺伝性疾患とされているが,全症例において家族歴は無く,患者本人のみの発症であった.遺伝子解析にて2例はM649I変異を,5例はE148Q変異,1例はC369T変異を有した.M694I変異以外の場合は臨床症状と合わせて診断する必要があり,コルヒチンの反応性を含んだTel-Hashomer基準を満たすことでFMFと診断した.発作症状が発熱のみの症例は認めず,全例で漿膜炎様症状や関節痛の併発があり,なかには他院にて虫垂炎と診断された一例もあった.7例を検証することにより,遺伝子解析はあくまでFMFの診断の補助であり,臨床症状と合わせて総合的に判断することが重要と考えられた.

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