2016 年 39 巻 4 号 p. 409a
【背景】クロドロン酸(Chlodronate)は,破骨細胞を枯渇させ骨吸収を阻害する化合物で,骨粗鬆症研究に用いられている.クロドロン酸は,細胞内でATP類似体としてATP代謝を阻害し,破骨細胞だけでなくマクロファージに対しても枯渇作用を示すことが知られている.今回,我々はリポ多糖体(LPS)を用いて敗血症性急性腎不全(AKI)モデルマウスを作製し,クロドロン酸を用いることでマクロファージを枯渇させ,AKIにおける腎機能障害や炎症性サイトカインに対する影響について検討した.【方法・成績】クロドロン酸投与48時間後にLPS 30mg/kgをC57BL6マウスに腹腔内投与し,18,120時間後のBUN値を測定した.18時間後ではクロドロン酸投与群においてコントロール群に比べて有意な低下を認め,120時間後において有意な上昇を示した.また,クロドロン酸投与群においてLPS投与後の生存率改善を認めた.LPS投与後18,120時間後の腎TLR4 mRNA発現に有意差は認めなかったが,18時間後にKim-1,IL-18に有意な低下を認め,120時間後ではKim-1,IL-6,MCP-1に有意な上昇を認めた.以上の結果よりクロドロン酸によるマクロファージ枯渇は,敗血症誘導性AKIの急性期において腎障害を改善するが,回復期では腎組織障害修復を遅らせる可能性が示唆された.【結論】敗血症誘導性AKIではマクロファージは急性期腎機能障害進展に対する役割や回復期に腎組織修復に対して保護的な作用を有すると考えられた.