日本臨床免疫学会会誌
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総説
腸上皮機能と炎症性腸疾患
岡本 隆一渡辺 守
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2016 年 39 巻 6 号 p. 522-527

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抄録

  腸上皮は個体の内外を分け隔てる物理的な境界として存在するだけでなく,腸内細菌等が存在する体外の環境と免疫担当細胞等が存在する体内の環境を仲立ちし,機能的に調和を保つ重要な役割を担っている.このような腸上皮が炎症性疾患の発症・病態の形成に果たす役割の重要性が臨床・病態研究の両面において注目されている.例えば粘液を産生する機能を有する腸上皮細胞である杯細胞は潰瘍性大腸炎において「消失」することが知られているが,同細胞が粘液産生機能だけでなく多彩な免疫調節機能を有し,疾患の発症・進展を規定する重要な機能を内在していることが明らかとなっている.更に小腸に局在する腸上皮細胞であるパネート細胞は抗菌活性を有するペプチドを産生する機能が知られているが,複数のクローン病疾患感受性遺伝子により同細胞の機能・細胞死が制御されている可能性が示されている.従ってクローン病における「パネート細胞機能異常」は特定の病型において疾患発症・再燃の要因の一つとなっているものと考えられている.本稿では腸上皮の機能と炎症性腸疾患の病態に関する近年の知見について,概説したい.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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