日本臨床免疫学会会誌
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特別講演
特別講演 驚異の免疫力
本庶 佑
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2017 年 40 巻 4 号 p. 252

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抄録

  PD-1は,1992年に京大医学部の石田らによる偶然に発見された分子である.その後の1998年までの遺伝子欠失マウスを使った研究で免疫応答にブレーキをかける受容体であることが証明された.2000年には京大とGenetic Instituteとの共同研究でPD-1のリガンドも発見された.2002年岩井らはマウスモデルでPD-1とリガンドの会合を阻害し,免疫活性を増強することによって抗がん能力が著しく高まることを発見した.この知見をもとにヒト型PD-1抗体を作り,がん研究に応用することを提案し,2006年ヒト型PD-1抗体の作製が行われた.その後治験が進みPD-1抗体はメラノーマの治療薬として2014年6月にPMDAによって承認された.現在,世界中では200件近くのPD-1抗体による各種がん腫治療への治験が進行中であり,有効性が確認されつつある.PD-1が発見されてから20年以上の歳月を経て今日,がん治療のペニシリンとも称される新しい画期的な治療法として結実した.ペニシリンに続いて発見された多くの抗生物質により人類が感染症の脅威から解放されたように,今後はがん免疫療法が改良され,がんによる死を恐れなくてなくても済むようになるだろう.

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