日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム1 細菌叢と免疫疾患
JS1-2 腸内細菌の腫瘍への浸潤は,腫瘍内炎症を介し大腸直腸癌の腫瘍免疫を亢進する
西塔 拓郎西川 博嘉和田 尚本田 賢也森 正樹土岐 祐一郎坂口 志文
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2017 年 40 巻 4 号 p. 256b

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抄録

  FOXP3+CD4+制御性T細胞(Treg)は抗腫瘍免疫を抑制する.ヒトではFOXP3はT細胞活性化に伴い発現誘導され,FOXP3とCD45RAにより3つの亜分画に分類され,FOXP3loCD45RA- T細胞は抑制機能を持たないnon-Tregである.大腸直腸癌より抽出した腫瘍浸潤リンパ球を評価すると,約半数の腫瘍においてFOXP3loCD45RA- T細胞が多数浸潤していた.これらのFOXP3loCD45RA- non-Tregの浸潤程度で大腸直腸癌は2つのタイプに分類できた.FOXP3lo T細胞が多く浸潤するタイプの腫瘍では,IL12A,TGFB1 mRNAの発現が有意に高値で,腫瘍内炎症が亢進していた.大腸癌に付着する腸内細菌叢を,FFPE組織を用いたFISH法と,切除新鮮標本の腫瘍表面より抽出した16S bacterial DNAを用いた16S sequencing法で評価した.腫瘍内炎症のある腫瘍(FOXP3loCD45RA- non-Tregが高頻度)では,腸内細菌,とりわけFusobacterium nucleatumが多く腫瘍内に浸潤していた.さらに,腫瘍内炎症のある腫瘍では無い腫瘍に比し予後良好であった.腸内細菌浸潤が腫瘍内炎症を介してFOXP3lo T細胞誘導に働き,抗腫瘍免疫応答を亢進する可能性があることが示され,大腸癌治療への応用が期待された.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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