日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム2 免疫疾患の新たな治療開発への方向性
JS2-5 視神経炎のバリエーションと免疫治療
毛塚 剛司石川 均後関 利明敷島 敬悟山上 明子三村 治吉富 健志平岡 美紀中馬 秀樹中村 誠田中 惠子
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2017 年 40 巻 4 号 p. 260b

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抄録

  特発性視神経炎と分類される疾患群には,血清中に神経グリア細胞に対する特異抗体である抗アクアポリン4(AQP4)抗体や抗ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG)抗体がみられることがある.AQP4はアストロサイト上に存在する膜タンパク質であり,その抗体は視神経や脊髄などを標的にして炎症を引き起こす.MOGは中枢神経髄鞘上に存在する分子であり,やはり視神経や脳脊髄に炎症を引き起こす.現在,日本神経眼科学会主導で,自己抗体陽性視神経炎の全国調査が行われており,特発性視神経炎が350例以上エントリーしている.その結果によると,抗AQP4抗体陽性視神経炎は特発性視神経炎の14%前後であり,中年後半の女性に多い.ステロイド治療による視力回復に乏しく,65%以上が矯正視力0.3未満である.多彩な視野障害のパターンをとり,視神経乳頭腫脹,眼球運動時痛が20%前後でみられる.抗AQP4抗体陽性視神経炎は再発することがある.一方,抗MOG抗体陽性視神経炎は,壮年男性にやや多く,ステロイド治療に速やかに反応し,良好な視力回復がえられる.視神経乳頭腫脹や眼球運動時痛が50%以上にみられる.抗MOG抗体陽性視神経炎は,抗AQP4抗体陽性視神経炎より再発しやすい傾向にある.これらの結果から,視神経炎の型を特異抗体で分類することは,予後の推定や長期の治療方針決定に有用と考えられる.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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