日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
ワークショップ1 がん免疫のチェックポイント
WS1-2 筋炎・心筋炎を合併する重症筋無力症
鈴木 重明
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 40 巻 4 号 p. 263b

詳細
抄録

  免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用(irAE)の中で,神経・筋疾患は多彩な症状を呈する.代表的な疾患は重症筋無力症(myasthenia gravis, MG)である.MGは神経筋接合部のアセチルコリン受容体あるいはmuscle-specific tyrosine kinaseに対する自己抗体が原因となる臓器特異的な自己免疫疾患である.MGの臨床症状の特徴は,運動の反復,持続に伴い骨格筋の筋力が低下し(易疲労性),休息により改善すること,夕方に症状が悪化すること(日内変動)である.2014年9月から2016年8月まで,ニボルマブが投与された9,869例の中でMGは12例(0.12%,M:F = 6:6,平均年齢73.5歳)で発症した(Suzuki S et al. Neurology 2017, in press).ニボルマブ投与開始の早期(多くが2回目の投与まで)にMGは発症し,その後,数日で急速に進行した.ニボルマブに関連したMGは4例がMGFA class 2までの軽症で,残り8例はclass 3以上の重症であった.特に,半数の6例はクリーゼを呈し,薬剤と関係のないMGに比べて重篤であった.また血清クレアチニンキナーゼの平均は4,799 IU/Lと著明な高値を示し,4例で筋炎,3例で心筋炎(うち1例は両者)を合併していた.irAEとして発症するMGは重篤な場合が多く,死亡例もあり,入院を含めた慎重な経過観察が必要である.MGと筋炎は基本的には異なる疾患であるが,irAEの場合にはしばしば両者が合併する点に注意が必要である.

著者関連情報
© 2017 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top