2017 年 40 巻 4 号 p. 273a
1892年,Metchnikoffは,ヒトデの幼生ビピンナリアをはじめとする無脊椎動物さらには脊椎動物の組織に異物を食べて消化する大型の細胞(貪食細胞)を発見しマクロファージと名付けた.1968年,FurthやCohnにより単核球系貪食細胞システム(Mononuclear phagocyte system, MPS)が提唱され,単球とマクロファージをまとめて単核球系貪食細胞と命名,すべての組織常在性マクロファージの起源は骨髄単球であると主張した.1989年,高橋潔・内藤眞博士らは,単球が発生する前の卵黄嚢・胎児肝にマクロファージが出現・存在することを報告し,MPSの矛盾を指摘した.21世紀に入り,組織マクロファージの大部分が,実は胎生期(卵黄嚢あるいは胎児肝)由来であることがfate-tracing技術を駆使して示された.機能的にも,胎生期由来マクロファージは自己複製能を有し長寿命で定常状態における組織恒常性の維持を担うこと,一方,骨髄単球を起源とするマクロファージは短寿命で,さまざまな炎症反応に積極的に関与すると言われている.本講演では,マクロファージ研究の歴史を紹介し,さらに,最近ヒトで報告が相次いでいる樹状細胞やマクロファージの前駆細胞に関する知見を,我々の研究成果を中心に紹介したい.