2017 年 40 巻 4 号 p. 279b
抗体医薬はがん治療に画期的な変革をもたらしたが,現状では,標的となるがん抗原の種類が限られている.一方,がん細胞に発現する変異自己蛋白,すなわち,ネオ抗原を標的とするがん特異的免疫療法が期待されている.がん組織にはしばしばB 細胞(TIBC)や形質細胞の浸潤が見られる.これらは,がん細胞表面抗原またはがん細胞から漏出した細胞内抗原に応答したB細胞と考えられ,その数ががん患者の予後に相関すると報告されている.正常では免疫寛容が成立しているので,TIBCの抗原受容体が認識する抗原は,正常な細胞には発現していないネオ抗原である可能性が高い.私たちはヒトがん組織のTIBCを分離・長期培養し,クローン化する技術を確立し,更に培養TIBCおよびそのクローンから抗体産生を任意に誘導する方法を開発した.同様に培養した抗原特異的マウスB細胞をマウスに移入すると,体内で長期生存形質細胞に分化し,同じ抗原を発現するがんの増殖を強く抑制した.したがって,がん患者のがん組織に反応するTIBCクローンを患者に戻すことにより,ネオ抗原を標的とする抗体が長期に産生されることが予想される.また,TIBCがネオ抗原をT細胞に提示して活性化することもあり得る.さらに,TIBCクローンから抗体遺伝子を単離し,ネオ抗原特異的ヒト型モノクローナル抗体やキメラ抗原受容体(CAR)の創出,さらには,その抗体が認識するネオ抗原を特定することも可能である.