2017 年 40 巻 4 号 p. 304b
【目的】家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL)はNK細胞やCTLの細胞傷害活性の異常を本態とする致死性の疾患である.FHL3型はFHL全体の30-40%を占め,常染色体劣性遺伝形式をとる.責任遺伝子のUNC13Dには100以上の変異が報告されており,mRNAのスプライシング異常を起こす変異が最も多い.今回,UNC13D遺伝子のexon duplicationによるFHL3症例を世界で初めて確認したので報告する.【方法】症例は1ヶ月男児.血球貪食性リンパ組織球症の家族歴を持ち,スクリーニング検査でNK細胞の脱顆粒機能低下とMunc13-4蛋白発現の欠損を認めた.遺伝子検査で父由来のアリルに既報のdeep intron変異を認めたが,母由来のアリルには変異が同定できなかった.UNC13D遺伝子の異常を同定するため母と患児のcDNAを解析した.【結果】PCRではUNC13D遺伝子転写産物のexon 6とexon 17の間に約500塩基対の挿入配列を認めた.Exon 11をforward primer,exon 9をreverse primerとしたPCRで母と患児より異常なPCR産物が産生された.患児のゲノムDNAを解析し,intron 6とintron 12にある23bpの相同配列を持つAluSx配列で重複がおき,exon 7からexon 12のexon duplicationが形成されたものと推察した.【結論】世界初のUNC13Dのintragenic duplicationによるFHL3症例を報告した.このような症例を見逃さないためにもFHL3のスクリーニングにおいて,脱顆粒機能評価,蛋白発現評価は重要と考える.