2017 年 40 巻 4 号 p. 306c
抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(TCZ)を用いた標準治療に抵抗性の視神経脊髄炎類縁疾患(NMOSD)に対する臨床研究では,明らかな再発抑制効果を認め,また併用薬の減量も可能であった(Araki et al. Neurology 2014).本発表では,15人の抗AQP4抗体陽性NMOSD患者に対する,TCZ投与前と1年後の末梢血白血球分画の解析の結果を報告する.TCZ投与前には,患者群ではCD56強陽性ナチュラルキラー(NK)細胞,CD56弱陽性NK細胞,粘膜関連インバリアントT細胞,ガンマデルタT細胞,そしてトランジショナルB細胞という,未熟なB細胞の分画がコントロール群に比較して減少していた.TCZ投与12か月後には,活性化制御性T細胞,CD56強陽性NK細胞,そしてトランジショナルB細胞の割合が増加していた.これらのリンパ球は,制御能を持つことが知られている.本研究では,NMOSDにおいて,多系統のリンパ球の数的異常と,TCZ投与後の正常化を認めた.IL-6は多機能なサイトカインであり,獲得免疫のみならず自然免疫でも多彩な機能を発揮するが,NMOSDにおいても多層性に病態に関与しており,その阻害により再発抑制に加えて免疫的異常が是正された可能性がある.この結果は,NMOSDの病態形成への理解と,NMOSDにおけるTCZの作用機序についての理解を深める知見となりうる.