2017 年 40 巻 4 号 p. 310b
【背景】SLE由来T細胞において新規のメチル化感受性疾患関連遺伝子を探索するため,SLEモデルマウスMRL/lpr(MRL)及び対照群C57BL/6(B6)より脾臓由来CD4陽性T細胞のメチル化DNAとmRNAを抽出し,網羅的シーケンス解析によって,MRLにおいてカテプシンE(CTSE)のイントロン1領域内のCGCG配列のDNA低メチル化とmRNAの有意な発現亢進を確認した.【目的】CTSEのCGCG配列に結合するメチル化感受性転写因子としてKaisoとHDAC3に着目し,SLEにおける病態的意義を検証する.【方法】マウスCD4陽性T細胞およびDNA脱メチル化剤5-Azacytidine(5-azaC)またはhistone deacetylase(HDAC)阻害剤Trichostatin A(TSA)で処理したマウスT細胞系培養細胞(EL-4)を用いて,ChIP-PCRによるKaisoとHDAC3のCGCG配列への結合を確認し,CTSE mRNA発現量をreal-time PCR法で定量した.またSLE初発治療前患者と健常者の末梢血CD4陽性T細胞でも同様に検討した.【結果】ChIP-PCRにてB6に比較しMRLでCGCG配列へのKaisoとHDAC3の結合能の低下を確認した.5-azaCとTSA処理後EL-4細胞でも有意にKaisoおよびHDAC3の結合能が低下し,CTSEのmRNA発現亢進を認めた.また,健常者に比較しSLE患者で末梢血CD4陽性T細胞のCTSE mRNAの有意な発現上昇を認めた.【結論】SLE由来T細胞では,CTSEイントロン1上のCGCG領域のDNA脱メチル化により,KaisoおよびHDAC3の結合が阻害され,CTSEの発現が亢進する可能性が示唆された.