2017 年 40 巻 4 号 p. 310a
これまで我々は滑膜線維芽細胞が機能的に異なる複数のサブセットから構成されることを明らかにしてきた.これらのサブセットのうち病的な機能を担うサブセットの分化や増殖,活性化などを制御する分子機構を明らかにすることができれば,線維芽細胞を標的とした新たな関節リウマチ治療戦略の開発へとつながることが期待される.今回我々はIL6を始めとする様々な炎症性サイトカインを高産生するサブセットに着目し,その細胞機能を制御する転写因子を同定することを目的とし検討を行った.
まず,滑膜線維芽細胞サブセットの網羅的遺伝子発現データを用い,炎症性サイトカインを高産生するサブセットにおいて,他のサブセットと比較して高発現する転写因子10個を選択した.次に,関節リウマチ患者の滑膜組織より樹立した滑膜線維芽細胞株を用い,これら10の転写因子の発現をそれぞれsiRNAにて低下させ,TNFα存在下で24時間培養し,上清中のIL6濃度をELISAにて測定した.その結果,5つの転写因子に対するsiRNAによりIL6産生が抑制された.これら5つの転写因子のうち,3つの転写因子はこれまで線維芽細胞におけるサイトカイン産生制御について報告がされていない新規転写因子であった.
滑膜線維芽細胞サブセットの網羅的遺伝子発現データを用いることにより,IL6産生を制御する新たな転写因子を同定することができた.