2017 年 40 巻 4 号 p. 318c
【目的】抗リン脂質抗体症候群(APS)は,不育症の最も重要な治療可能な原因であるが,抗凝固療法にもかかわらず出産率は70∽80%に限られる.Lupus Anticoagulant(LA)陽性,抗リン脂質抗体(aPL)複数陽性は妊娠予後不良と関連すると報告されている.抗カルジオリピン抗体に焦点を当てたゲノムワイド関連解析(GWAS)によっていくつかの関連遺伝子が報告されたが,産科APSに着目した遺伝子の探索は行われていない.そこでLAに焦点を当てた産科APSのGWASを施行した.【方法】国際抗リン脂質抗体学会の基準に従って診断された産科APSのうちLA強陽性患者115人と419人の健常者との426,344のSNPの対立遺伝子または遺伝子型頻度をGWASによって比較した.候補領域についてimputation解析を実施し,validation studyも行った.【成績】TSHRの3'UTR上に位置するSNP(rs2288493)は,recessive modelで有意な関連(P = 7.85E-08,OR = 6.18)を示した.C1D周辺に位置するSNP(rs79154414)は,imputation解析後に対立遺伝子モデルにおいて有意な関連(P = 4.84E-08,OR = 6.20)を示した.【結論】TSHRおよびC1Dが産科APSに関連している可能性が示された.これらを含めた候補遺伝子について関連を確認する必要がある.