2017 年 40 巻 4 号 p. 318b
天疱瘡はデスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体による自己免疫性水疱症で,免疫グロブリン大量療法(IVIG)は難治例に対する治療選択肢の一つである.本研究では,免疫したDsg3−/−マウスの脾細胞をRag2−/−マウスに移入することで作成した天疱瘡モデルマウスと,Dsg3に対するモノクローナル抗体AK23のノックインマウスを用いて,天疱瘡におけるIVIGの作用機序の解明を試みた.天疱瘡モデルマウスに5日間のIVIGを行なった群では,PBS投与群に比べて抗Dsg3抗体のELISA値が60%低下していた(p < 0.01).F(ab')2部分のみの投与では抗Dsg3抗体価は減少せず,Fc部分が必要と考えられた.ELISPOTで,IVIGは天疱瘡モデルマウスの脾臓の抗Dsg3抗体分泌細胞を半減させており(p < 0.01),磁気ビーズによる選別で,主にB220陰性の抗Dsg3抗体分泌細胞が減少していた(p < 0.05).またIVIGは,天疱瘡モデルマウス由来のB220陰性CD138陽性の培養細胞のDsg3抗体産生を濃度依存性に抑制した.IVIG投与後のAK23ノックインマウスの脾臓におけるELISPOTで抗Dsg3抗体分泌細胞数を減少させたが,フローサイトメトリーでB220陰性CD138陽性細胞数は変わらなかったことから,IVIGは形質細胞を含むB220陰性細胞の自己抗体産生を抑制すると考えられた.