2017 年 40 巻 5 号 p. 382-386
51歳の男性は,鼻出血,肺多発結節・腫瘤,検尿異常,腎病変,proteinase 3-anti-neutrophil cytoplasmic antibody(PR3-ANCA)高値より多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis: GPA)を疑いステロイドパルス療法を行った.治療開始翌日に回腸穿孔による汎発性腹膜炎を来し回腸切除術と腹膜炎手術を行い,病理所見より回腸穿孔部周囲の壊死性肉芽腫性血管炎を認めGPAと診断した.ステロイドパルス療法,単純血漿交換療法,cyclophosphamide大量静注療法(intravenous cyclophosphamide therapy: IVCY)により寛解導入療法を行い,glucocorticoidとAzathioprineにより寛解維持療法を行い良好な経過を得ることができた.GPAにおける消化管穿孔は稀な合併症であり,我々は本症例と過去の報告から消化管穿孔を合併したGPAの臨床的特徴,治療内容,予後を検討した.全報告例で肺病変を合併し,消化管穿孔は小腸に多く,発生時期は治療開始の直前・直後に多く,死亡率が46.7%と消化管穿孔合併のGPAは予後不良の重症病態であった.生存群では死亡群に比べて耳・鼻・上気道病変の頻度が有意に高く(生存 87.5%,死亡 28.3%,P = 0.041),治療ではIVCYの使用頻度が死亡例(16.7%)より生存例(62.5%)で有意ではないが高い可能性があった.消化管穿孔を合併するGPAは予後不良の重篤な病態であるが,早期に診断し強力な治療行うことにより予後を改善させる可能性がある.