インターロイキン1βは炎症性サイトカインの一つとして広く知られており,炎症を語る上で無視できない重要因子である.それゆえにインターロイキン1βの機能や特性は多くの研究者により解析されてきたが,まだ解明されていない問題が残されている.これらの問題にアプローチするために,最近では生体イメージング技術が利用され始めてきている.インターロイキン1βは炎症刺激によって転写活性化とプロセシングによる2段階のユニークな制御を受けることが分かっており,その制御機構を巧みに利用したイメージング用ツールが幾つか開発されている.この総説ではインターロイキン1βに関する代表的なイメージング技術について基礎となる仕掛や得られている知見などを紹介する.また,「おわりに」のところではインターロイキン1βとは別の因子に着眼した炎症イメージング技術についても触れたので,ぜひ参考にしてもらいたい.
皮膚は生体の最外層に位置する人体最大の臓器である.皮膚は,生体の水分保持や外界からの刺激に対する「物理的バリア」としての機能のみならず,免疫応答を介した生体防御の最前線として「免疫学的バリア」という極めて重要な役割を果たしている.皮膚に侵入した多種多様な抗原に対し,T細胞は抗原特異的かつ迅速に応答し,病原体の排除を行う必要がある.そのため,効率的にT細胞が活性化させる仕組みが必要となってくる.一方で,過剰な免疫応答は自己の障害に繋がるため,生体は免疫応答を負に制御するメカニズムも有している.これらのメカニズムについて,従来細胞培養系やex vivoの系での解析が中心であったが,近年,生体内での細胞動態を直接的に観察する“ライブイメージング”という手法が導入され,生体内での免疫反応が可視化することが可能となってきた.本稿では,ライブイメージングを用いて明らかとなった,皮膚でのエフェクターT細胞の活性化制御機構,および樹状細胞の動態制御機構について,最近の我々の研究成果を紹介する.
In vivoイメージング技術は,個体・組織を生かしたままで,生体内の様々な細胞の時空間的な挙動や機能をリアルタイムで解析する強力なツールである.著者らは,生体イメージング系を独自に改良することで,マウスが生きたままの状態で骨破壊が起きている骨・関節の表面部分を詳細に可視化する系を確立した.本技術を用いて,著者らは特に,骨関節破壊に関わる破骨細胞の動きと機能に注目して解析を行い,破骨前駆細胞の骨への遊走・位置決めがスフィンゴシン1リン酸によって制御されていることを明らかにした.また,骨表面上での生きた成熟破骨細胞による骨破壊過程を可視化することに成功し,破骨細胞による骨吸収制御メカニズムを解明するとともに,生体内において各種骨粗鬆症治療薬および分子標的治療薬が破骨細胞に及ぼす効果を明らかにした.本稿では,in vivoイメージング技術で明らかとなった破骨細胞研究の最前線について概説する.
神経系と免疫系はヒトを支えるふたつの広大なシステムである.両者の相関はこれまでにも研究がなされてきているが,神経系による免疫系制御が昨今注目を集めている.自律神経系に関してはinflammatory reflex仮説をベースに迷走神経刺激による幅広い抗炎症作用が臨床への応用という視点からも期待されている.また交感神経系によるリンパ球動態制御については,近年その分子基盤が解明され,さらなる研究の進展が期待される.元来,神経系は免疫系の入り込めない隔絶組織であり,生理的には免疫反応は起こり得ないと認識されている.しかし各種の免疫異常とバリアの破綻が相俟って神経免疫疾患が発症する.自律神経系については自律神経節に存在するアセチルコリン受容体は自己免疫の標的となることが知られている.血清中で抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体を認め,広範な自律神経障害を呈する疾患,自己免疫性自律神経節障害の臨床的特徴が明らかになりつつある.免疫系と自律神経系の間で「接点」として働く神経伝達物質と受容体,自己抗体について述べ,その「相関」の結果,起こってくるさまざまな変化や臨床的事項について概説した.
骨は運動器としてだけでなく,造血幹細胞や免疫前駆細胞の維持・分化増殖の場を提供する免疫組織としても重要な役割を果たす.また骨と免疫系はサイトカインや受容体などの多くの制御分子を共有しており,そのため様々な炎症疾患において骨組織に障害が波及する.その代表的な例が関節リウマチであり,Th17細胞による破骨細胞活性の亢進が関節リウマチにおける骨関節破壊の根幹を築いている.関節リウマチ研究の進展によりIL-17と骨の関係性がクローズアップされ,骨免疫学の推進力となった.さらに近年,IL-17による骨制御は予想以上に複雑であることが分かりつつある.強直性関節炎ではIL-17産生細胞が腱靭帯付着部の骨化誘導に関わり,また骨折治癒ではIL-17産生性γδT細胞が間葉系幹細胞に作用して骨再生を促す.免疫と骨の双方が絡む病態を理解するには,骨と免疫細胞の相互関係を包括して捉える視点が必要不可欠である.
破骨細胞は,骨髄造血幹細胞由来の単球/マクロファージ系前駆細胞から分化した生体内で骨組織を破壊・吸収することのできる唯一の細胞である.その分化はM-CSF(破骨細胞生存因子)/RANKL(破骨細胞分化誘導因子)シグナリングに依存していると考えられている.しかし,最近,関節リウマチのような全身性自己免疫疾患における慢性炎症病態では,関節局所の豊富な炎症性サイトカインが病的な骨吸収細胞の分化を誘導し,過剰な骨破壊を惹き起している可能性が提起されている.そして,著者らはマウス骨髄単球およびヒトCD14陽性単球を炎症性サイトカインであるTNFα + IL-6で刺激・培養することにより破骨細胞の特徴を呈する骨吸収細胞(破骨細胞様細胞)が分化誘導されることを見出した.本稿では,著者らのデータの一部とともにRANKL非依存性の破骨細胞分化誘導機構について,最新の知見を交えて解説する.今後,RANKL非依存性の破骨細胞分化誘導機構が明らかになり,新たな破骨細胞サブセットが同定されることで,炎症性関節疾患における病態解明と新規治療戦略へと発展していくことが期待される.
川崎病は小児に好発する全身性急性血管炎である.主要症状の一つである眼球結膜充血以外にも様々な眼合併症を呈するが,小児科医の認知度は低い.川崎病の急性期に視神経乳頭腫脹を合併し,その所見が遷延した2歳女児例を経験したため報告する.本例は基礎疾患として家族性滲出性硝子体網膜症が存在し,生後4か月時に光凝固術が施行され,以降,当院の眼科で経過観察されていた.眼科定期受診時に,両眼球結膜充血,右視神経乳頭の腫脹を指摘され,小児科に紹介された.受診時はすでに解熱していたが,問診により,発熱を含めた川崎病主要症状4項目を呈し,心臓超音波検査で冠動脈の拡張を認めたため,川崎病と診断した.第15病日に免疫グロブリン静注療法を行い,炎症所見は速やかに改善したが,視神経乳頭の腫脹が消失するのに6か月を要した.経過中,視機能の低下は認めなかった.一般に,川崎病の眼合併症は前眼部に好発し,2か月以内に自然軽快するとされている.視神経炎および視神経乳頭腫脹を合併した川崎病についての既報告例を検討すると,7例中3例で2か月以上に渡り所見が遷延していた.ただ,本例のように,川崎病で視神経乳頭腫脹が6か月間遷延したという報告はこれまでに1例しかなく,極めて稀である.
51歳の男性は,鼻出血,肺多発結節・腫瘤,検尿異常,腎病変,proteinase 3-anti-neutrophil cytoplasmic antibody(PR3-ANCA)高値より多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis: GPA)を疑いステロイドパルス療法を行った.治療開始翌日に回腸穿孔による汎発性腹膜炎を来し回腸切除術と腹膜炎手術を行い,病理所見より回腸穿孔部周囲の壊死性肉芽腫性血管炎を認めGPAと診断した.ステロイドパルス療法,単純血漿交換療法,cyclophosphamide大量静注療法(intravenous cyclophosphamide therapy: IVCY)により寛解導入療法を行い,glucocorticoidとAzathioprineにより寛解維持療法を行い良好な経過を得ることができた.GPAにおける消化管穿孔は稀な合併症であり,我々は本症例と過去の報告から消化管穿孔を合併したGPAの臨床的特徴,治療内容,予後を検討した.全報告例で肺病変を合併し,消化管穿孔は小腸に多く,発生時期は治療開始の直前・直後に多く,死亡率が46.7%と消化管穿孔合併のGPAは予後不良の重症病態であった.生存群では死亡群に比べて耳・鼻・上気道病変の頻度が有意に高く(生存 87.5%,死亡 28.3%,P = 0.041),治療ではIVCYの使用頻度が死亡例(16.7%)より生存例(62.5%)で有意ではないが高い可能性があった.消化管穿孔を合併するGPAは予後不良の重篤な病態であるが,早期に診断し強力な治療行うことにより予後を改善させる可能性がある.
A woman in her thirties was diagnosed as Takayasu's arteritis (TAK) by dilatation, wall thickness of her abdominal aorta in contrast-enhanced computed tomography. Although she didn't have any subjective bowel symptoms, fluorodeoxyglucose (FDG)-positron emission tomography (PET) also revealed uptake of FDG in descending colon, and colonoscopy revealed aphthous colitis. After the start of steroid therapy, both arteritis and colitis were improved. FDG-PET can detect TAK and inflammatory bowel diseases at an early stage. FDG-PET is a less invasive module with a high sensitivity for detecting colitis, therefore should be considered for TAK even without physical colon symptoms.